MFA(芸術修士)取得後のキャリアパス
- SATSUKI DESIGN OFFICE
- 3月8日
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2023年に京都芸術大学大学院(IDS)でMFA(芸術修士)を取得して、2年が経ちました。MFA取得者が伝える「デザインとは」。学んだ理論やスキルを、現実の課題解決にどう活かしていくのか?について、今日はお話ししたいと思います。
デザインとは何か。
デザインとは、目的設定・計画策定・仕様・表現という一連のプロセスで考えるものであり、具体的には、人・ユーザー・社会にとって価値あるものやことを見出し、それを達成できるように計画し、他者が理解できるように表現する行為である。
課題解決: デザインは、誰かのために思考し、最適なモノとして表現することで、課題を解決するためのもの。
成果: 特定の環境・制約・要件のもとで、目的達成を意図して生み出し、成果が伴うもの。
関係構築: デザインの本質は「なんらかのモノやコトとの関係の構築」であり、形を作ることでつなぐためのもの。
計画と表現: アイデアを出して創り出す計画をし、何らかのものやこととして表現し、皆にわかるよう示すこと。
つまり、デザインとは、かっこよさ、美しさだけを追求するのではなく、機能性や使いやすさも考慮に入れ、アートとは異なり、課題解決を目的とします。ちなみにアートとは、作者の自己表現や問題提起を主としますが、デザインは特定の目的や問題の解決を目指します。
デザインは、単なる装飾ではなく、人々の生活をより良くするための創造的かつ体系的な活動とも言えるでしょう。
学んだ理論やスキルを、現実の課題解決にどう活かしていくのか。
デザイン思考を用いて研究を行うので、まずはデザイン思考のおさらい。
デザイン思考の5つのプロセス
共感(Empathize)ユーザーのニーズや課題を深く理解するために、観察やインタビューを行い、ユーザーの視点に立ちます
定義(Define)観察や共感で得た情報を基に、解決すべき具体的な課題や問題を明確化します
アイデア出し(Ideate)定義した課題に対して、ブレインストーミングなどの手法を使い、多様なアイデアを生み出します
試作(Prototype)アイデアを形にするための試作品(プロトタイプ)を作成します。
テスト(Test)試作品を実際のユーザーに試してもらい、フィードバックを得て改善を繰り返します
デザイン思考は、ユーザー中心であるため、ニーズに基づいた解決策が練られ、新しいアイデアやイノベーションが生まれやすいとされています。そして、繰り返し改善することにより、精度の高い成果物ができあがると言われています。
私は、デザインの仕事を生業としているので、デザイン思考が新発見ではなく、普段からこのプロセスで仕事に向き合ってきました。だから、自分としてはデザイン思考のプロセスについては、理解しているのだけど、日々の案件の中で、人や企業に伝わらないことが多々ありました。デザインについて話すたびに、どうして(私が思う)当たり前のことが、通じないんだろう?と。でも、わかってもらうために他者に言語化して伝えることが、とても難しくて、大学院に入る前は上手にできませんでした。
それができるようになったことが一番の学びであり、MFA取得後のキャリアに役立っています。
MFA(芸術修士)を取得後、デザインを通じて得る新たな視座
デザインのことはわからないから、全部お任せする。 デザインが好きだから、スキルはないけれど、自分で作りたい。
これは、ビジネスにおいて、どちらも間違った選択なのだけど、大学院へ行く前は、議論することを諦めていました。特に、デザインが好きだからやっちゃうというクライアントに出会ったとき、その間違いをどう伝えたらいいのかわからなくて言葉にできなかったのです。
はっきり言っちゃうか、言わないか。
はっきり言いつつも、相手を傷つけない。知るきっかけや、学ぶチャンスを与えるという、3つ目の提案ができるようになりました。
私は今、MFA(芸術修士)を取得して、アトリプシー/ART+3Cという活動をしています。ビジネスの創造という行為自体がすでにデザインであり、どのようにビジネスを作り上げていくのか、どのようにコンセプトを伝えていくのか、すべてのプロセスにおいて役立っています。
また、私はわかる人、あなたはわからない人と線を引かずに、話してみることから逃げないようになりました。そして、わからせようとしない。わからないという状況を一緒に楽しめるようになりました。私も価値観の異なる人たちとのコミュニケーションの中で新しい気づきを得ることができますし、決して、私が正しいわけではなく、私とあなたで、新しい見せ方を考えてみようという姿勢で課題に向き合えるようになりました。
20代、30代と創造のために、デザインの技術を使って、尖ってやっていたけれど、40代になり学びと闘病を経て、デザインを広義に捉え「関係の構築」という観点から、デザインが生み出す価値について深く掘り下げ、ビジネス、人々の生活、社会全体における「つなぐ力」としてのデザインを今はしています。
MFAを取る前と同じ仕事をしていたとしても、新たに見えてくる「世界」があるのではないかと思います。
