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執筆者の写真SATSUKI DESIGN OFFICE

モノをつくる試行錯誤から学ぶ、自分らしく生きる術 ~没入型アクティブ&クリエイティブ空間の創造~

更新日:2023年2月7日



▶背景

2030年には、少子高齢化が更に進行し、65歳以上の割合は総人口の3割に達する一方、生産年齢人口は総人口の約58%にまで減少すると見込まれている。子どもたちの65%は将来、今は存在していない職業に就くという予測や、今後10年~20年程度で、半数近くの仕事が自動化される可能性が高いなどの予測がある。このような中で、グローバル化、情報化、技術革新等といった変化は、全ての子どもたちの生き方に影響するだろう。したがって、子どもたちが未来に対応するためには、社会の変化に受け身で対処するのではなく、主体的に向き合って関わり合い、一人一人が自らの可能性を最大限に発揮し、よりよい社会と幸福な人生を自ら創り出していくことが必要である。


▶目的

自分らしく豊かに生きていくために求められる資質・能力を育成する手法を分析し、子どもたち一人一人の可能性を伸ばすために地域社会でできることを明らかにする。


▶私の作りたい世界

キュレーターや学芸員、アーティスト、職人、科学者、教育者などが実験を行うためのクリエイティブなスペースを作りたい。さらに、デザイン事務所、アーティストのアトリエ、保育園、リラクゼーション施設、プラントベースのカフェなどが隣接している。そして、このスペースのいたるところに、メーカーが廃棄した様々な種類の素材、その素材をティンカリングするための道具が配置され、新しいテクノロジーも揃っている。私たちは、アートとサイエンスとテクノロジーの交差点で集まり遊ぶ。


このスペースでは、知識が一方的に教える側から学ぶ側に伝達されるのではなく、誰しもが学ぶ側となる。学びを心から楽しいと感じ、積極的にモノづくりに取り組むことによって、喜びを皆で分かち合うことができる場であり、生きがいを感じる場でもある。つくり出すモノ自体は、個人的に意味のあるモノであり、教える側は学ぶ側の知識の構築をサポートするのみである。つまり、一人ひとりがそれぞれの価値観で、自分が豊かに生きるためには何を生み出すべきかを考え、構築するために「自分の手で考える」機会を設計する。



▶スペースの概要

①アクティビティデザイン

人がどのように考え、どう行動するかを中心に据えながら、モノづくりを通じて学習と創造性を探求する実践的な活動の開発を行う。素材、ツール、テクノロジーと相互作用するために、STEAM(科学、技術、工学、芸術、数学)教育を手段として用いる。実験、反省、この反復を通じて、活動を発展させる。


②環境デザイン

スペースのレイアウトは、アイデアとひらめきがぶつかり合わないように計らい、一人ひとりの率先力と自律性を尊重することができるように設計にする。また、異なる分野の人が対話できるようにして、コラボレーションを促進する。


③ファシリテーション

スペースのスタッフと来場者の間の相互作用を起こすファシリテーションを行い、双方の興味をかき立てる。ファシリテーターは、一人ひとりの可能性に基づいて、興味を惹きつける。また、学ぶ者の意図を明確にするために会話でサポートする。


④バーチャル空間

スペースから見る景色は、現実世界では見ることのできないあらゆる生物と共存する世界である。このスペースをめぐることで地球の自然を五感で体感できる。



▶スペースの環境への配慮

サーキュラーエコノミー(循環型経済):「廃棄」されていた製品や原材料などを新たな「資源」と捉え、廃棄物を出すことなく資源を循環させる経済の仕組みを取り入れる。


原材料調達・製品デザイン(設計)の段階から回収・資源の再利用を前提とし、廃棄ゼロを目指す。できる限りバージン素材の利用を避け、回収後リユースやリサイクルがしやすいよう解体を前提としたモジュールデザインを導入し、修理や部品交換などを通じて製品寿命をできる限り長くするなどを考えながら物を作ることを前提とする。


なぜなら、2050年には世界人口は98億人になり、2060年にまでに世界全体の資源利用量は2倍(167ギガトン)に増加すると推計されている。つまり、人口も増え、一人あたりの豊かさも増えれば、当然ながらその生活を維持するために必要な資源の量も増加する。しかし、その資源を生み出している地球は一つしかないからだ。


▶どのような新しい体験を生み出すのか

①科学的な調査に深く関わり、アイデアとアートを融合させ「何か」をつくることができる。

②注目のアーティストと会話したり、共同制作活動に参加することができる。

③学習者自らプロジェクトを発足させ、試行錯誤し、問題を解決し、自分の目標を達成するための個人的に意味のあるソリューションを構築することができる。

④誰かと一緒にアイデアを試したり、プロトタイプを作成することができる。

⑤皆と試行錯誤の経験について話し合ったり、雑談することができる。

⑥自分の結論に到達するためのツールと環境は提供してもらえる。※但し、どうやって到達するかは試行錯誤しながら自ら学ぶ。


<流れ>

①個人的に疑問に思っていることを話してみる。

②どうやったら解決できるか考え、探す。

③この探す行為が学びとなる。

④伝統的な技術とデジタル技術を掛け合わせて作ってみたり、古い技術を見直してみたり、誰かと一緒に作って見たり、ユーモアを持ちながら、試行錯誤する。

⑤失敗する。この失敗という行為が、学びとなる。

⑥危険な状況に自らを置き、気を付けることで考えてみる。思いついたら手を動かしてみる。


人とともに作りながら話し、話しながら作り、一人では無理なことを誰かと一緒なら学べるという可能性や希望を感じることのできる、新しい教育の場。参加者全てが、学ぶ立場になり得る機会を与えられる。自分自身がまず楽しめる場であり、自分の可能性を鍛えていくことが「自分らしく生きる術」であり、より豊かに生き生きと生きていくための新しい体験の場になると考える。



▶社会課題の解決(仮説)

①メーカー、アーティストの支援

メーカーやアーティストの存在を来場者に知ってもらうことで、ファンを増やし、日本の モノづくりの支援へと繋がるのではないか。

②女性の自立支援

自らモノをつくりだすことができれば、生み出されたものを販売し自立できるのではないか。

③環境保全

廃材をアップサイクルすることで、環境保全へと繋がるのではないか。

④身体と心の健康を支援

報酬が得られる手段を学び、自分の存在意義を認識し、バランスのとれた食事と適度な 運動と休息が得られ、多様な価値観を持つ仲間と繋がることができれば、肉体的にも精神的 にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(=well-being)が実現できるのではないか。




▶今後の課題

何か楽しいことが起こりそう!と思わせるプレイフルな状態をたえず用意するにはどうしたらいいのか。さらに、その場に集まった人たちが仲良くなれるように、ドキドキする体験やワクワクする楽しいイベントをつねに企画し続ける必要がある。




私は、子どもたちに、アーティストが衝動的に作品を生み出すような感覚で、新しい価値を生み出せる思考を授けたい。それは、個々人がいきいきと生きていくために必要なものであり、自分とその周りに存在する人々を、ワクワクドキドキさせるためにも必要である。つまり、一人ひとりが日常的に起きる問題に対して「自分事にする」というプロセスが必要であり、主体的に楽しい未来の創り方を考えるマインド、自分が作った環境に他者を巻き込む力も提供する必要があると考えている。


どうすればプレイフルになるのか。どういうツールがあればプレイフルなコミュニケーションが生まれるのか。それらは、他者から「ありがとう」と言われることを考えて実行すればよいという、いたってシンプルな行動であり誰もが望んでいることであるが、実現できていない。この「感謝」の循環が生まれると、プレイフルな場所がどんどん世界に増えていき、平和で豊かな未来が生まれるはすなので、私はそこに挑戦していきたい。






参考文献:上田信行. プレイフル・シンキング[決定版]: 働く人と場を楽しくする思考法

参考サイト:the Exploratorium https://www.exploratorium.edu/

オランダ政府 From a linear to a circular economy https://www.government.nl/topics/circular-economy/from-a-linear-to-a-circular-economy 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/16/dl/1-01.pdf

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